正直薬剤師のクイズで学ぶ臨床薬学

幅広い医療知識を身につけましょう!

その薬、たまに飲んでも意味がない?

医師から処方された薬を指示通り服用せず、症状が出た時だけ飲んだりしてませんか?

薬を一度飲んだだけでも、一時的に効果が期待できるでしょうか?

この記事では薬を決められた通りに飲む必要性について、お伝えできればと思います。

 

結論から申し上げますと、薬の種類によっては指示通り服用しないと効果が期待できない事があります。

 

具体例をいくつかみてみましょう。

 

1、血圧が安定しているので、血圧が高くなった日だけ血圧の薬を服用してもいいですか?

 

2、コレステロールの薬は筋肉が溶けると週刊誌に書いていて、こわくなったので飲む回数を減らしていいですか?

 

3、喘息症状が落ち着いてきたので、毎日使用していた薬を発作時のみとしていいですか?

 

4、処方してもらった風邪薬の中に咳の薬が入っていたが、咳は現状出ていないので症状が出てから服用を開始してもいいですか?

 

いかがでしょうか?上記の飲み方で問題ないでしょうか?

ひとつづつ解説していきます。

 

1、血圧が安定しているので、血圧が高くなった日だけ血圧の薬を服用してもいいですか?

→一度の服用では有効な血中濃度(薬の効果が出始める濃度)に達しない場合が多く、効果が期待でない場合があります(図1参照)。また、お医者さんは薬を飲んでいる前提で血圧変動の把握を行います。正確な診断や薬物選択の妨げにもなるため、きちんと飲むようにしましょう。

有効な血中濃度は薬によって様々ですが、一度の服用で超える場合と超えない場合があります。

一度の服用で超えない場合は、適切な投与間隔を空けながら複数回服用する必要があります。

 

 

 

 

一般的に4~5回の服用で定常状態(薬が血中に入ってくる量と排出される量が等しい状態)になります。

具体的な例を挙げると、薬物の消失半減期(薬が体内から半分になるまでの時間)が4時間の場合、次の投与は前の投与の消失半減期の終了後に行われます。4時間の消失半減期を持つ薬物の場合、投与間隔は一般的に4時間から5時間程度となることが多いです。そのため薬物を4回から5回投与することで、定常状態に到達します。

つまり定常状態に到達するには約16〜20時間(4時間の消失半減期の4倍から5倍)が必要です。

2、コレステロールの薬は筋肉が溶けると週刊誌に書いていて、こわくなったので飲む回数を減らしていいですか?

前述と同様に、適切に服用しないと有効な血中濃度に達しない場合が多く、効果が期待できない場合があります。

コレステロールの薬に共通する副作用として、横紋筋融解症(骨格の細胞に含まれる成分が血中へ溶け出すこと)がありますが、これが巷で筋肉が溶けると噂されているものになります。

確率は非常に低いですが、筋肉量が多い太もも等の痛みや手足のしびれが初期症状として現れやすいため服用中は注意が必要です。

服用後2週間~4カ月頃に出現する可能性が高いため、長く服用されている方は過度に心配する必要はないと言えるでしょう。

 

3、喘息症状が落ち着いてきたので、毎日使用していた薬を発作時のみとしていいですか?

→発作止めの薬であれば問題ない。

ただし、発作時に予防薬を服用しても無効な場合があるので注意しましょう。

またシムビコート(ブデホル)吸入のように、予防薬としても発作止めとしても使える薬がある事も知っておきましょう。

 

4、処方してもらった風邪薬の中に咳の薬が入っていたが、咳は現状出ていないので症状が出てから服用を開始してもいいですか?

→処方医によって判断が異なるため、症状が出ていなくても服用しておいた方が無難。

一般的に、風邪などで一時的に咳が出ている場合の咳止めは症状が出てからの服用でも問題ありません。ただし、基礎疾患がある方や、肺炎を起こしやすい感染症の場合等、あらかじめ服用しておいた方がいい場合もあるため服用しておいた方がいいと思われます。